投資とは長期の視点で利益を得ようとするものであり、その意思決定プロセスにはファンダメンタルズ分析が必要です。
・ファンダメンタルズ分析の定義
・暗号プロジェクトの将来的な価値を分析するためのフレームワーク
・暗号プロジェクトの野心やパフォーマンスを定量化する方法
・投資におけるラテラルシンキングの重要性
投資とは長期の視点で利益を得ようとするものであり、その意思決定プロセスにはファンダメンタルズ分析が必要です。
一般的に、金融市場におけるファンダメンタルズ分析では、指標により、リスクの度合いやリターンを得られる可能性を予測し、公開・非公開の株式を通じて、企業に投資することで利益を得ます。
株式市場で取引される際に、最も使われる指標は、株価収益率(別名:PEレシオ)です。
PEレシオは、株価を1株当たりの利益で割ることで、企業が正しく評価されているかを推定する効果的な方法です。
しかし、残念ながら暗号通貨は、企業のように収益源を生み出すものはほとんどなく、暗号通貨の価値は、将来的な収益の可能性や基盤となるブロックチェーン、参加者とユーザーのネットワーク、基盤となる資産の本質的な価値に対する認識によって変動するのです。
したがって、暗号通貨プロジェクトへの長期的な投資に関する意思決定は、これらの価値を評価できるものさしのようなものが必要であり、それがファンダメンタル分析に集約されているということになります。
テクニカル分析は、値動きや指標によりパターン化されたものであるのに対し、暗号通貨のファンダメンタル分析は、プロジェクト自体の潜在的可能性だけでなく、幅広い社会経済の変化を分析するものです。
暗号通貨プロジェクトについて分析する際には、まず、基本的な疑問から解決していく必要があります。
暗号通貨はどのような問題を解決しようとしているのか?
暗号通貨のファンダメンタルズ分析を始めるには、「どのような問題を解決しようとしているのか」というシンプルな質問から始めるのがよいでしょう。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、暗号通貨が何をするのか、現実世界のどのような問題を解決するのかを考えずに、複雑な言葉や野心に誘惑されることは危険なことなのです。
その暗号通貨が現実の問題を解決しないのであれば、長期的な価値を持っていると考えられないでしょう。ドットコムバブルのように、明確なユースケースを持たないビジネスはいずれ破綻します。
2017年から18年にかけてのICOブームでは、アイデア程度にしか過ぎない薄っぺらいコンセプトに基づいて、莫大な投資と非現実的な将来価値への期待がプロジェクトによって生み出されたのです。
ドラゴンコインはその良い例です。ICOで3億2000万ドルを調達し、2018年3月に史上最高値の2.40ドルで取引されましたが、3年後に開発を断念したことで価格は99.74%下落しています。その理由として考えられるのは、明確な目的がなかったことです。
ドラゴンコインのウェブサイトはすぐに赤旗となるようなお粗末なもので、自らの暗号通貨を「エンターテイメント・トークン」と表現していましたが、その意味を説明しようとするテキストはまるで言葉のスープのように薄く浅いものでした。
暗号通貨プロジェクトは、解決しようとしている問題を一文で明確にできるはずで、プロジェクトのウェブサイトやホワイトペーパーと呼ばれるものの1ページ目に目立つように記載されていると思われます。
ビットコインのホワイトペーパーの1段落目はこうなっています。
ビットコインとは何か、ビットコインが解決しようとしている問題とは何かが非常に簡潔に説明されています。残りの部分はわずか9ページで、ビットコインによって二重支出の問題を解決する方法を説明するために続いています。このように、ホワイトペーパーは以下の内容を含む必要があります。
・プロジェクトが行うこと
・なぜそれが存在するのか - 解決する具体的な問題の詳細
・どのように問題を解決しようとするのか
・プロジェクトを支えるチーム
ホワイトペーパーを見るだけで、そのプロジェクトについて多くのことが分かります。例えば、コンテンツの質、何が、なぜ、どのように書かれているか、プロジェクトに直接関わった人やサポートしている人の評判などが書かれています。
初期の暗号通貨のホワイトペーパーの多くは、インターネットから直接テキストをコピーした手抜きでした。それに対して、ビットコインのホワイトペーパーには、コピーアンドペーストをした要素が全く含まれていません。それは純粋にアイデアの強さと、解決しようとしている問題を明確に理解していることによって生まれたものだと考えられます。
バリデーション(検証)
ビットコインのホワイトペーパーは、わずか9ページである。1ページ目は「なぜ」「どうして」を明確に示すことに特化しており、結論以外の部分はビットコインによって二重支出問題を解決する方法を説明しています。
残りの8ページは、基本的に見出しの主張を補足するものであり、悪魔は常に細部に宿るものと述べている。暗号通貨は、優れた価値貯蔵手段であると主張しても、どれほど市場に出回っているのかが分からなかったり、分散型であると主張しても、非常に狭い指揮統制構造を持っていたりします。
このようなホワイトペーパーには改善の余地が見られるが、とりわけ、そのプロジェクトが「書いてあるとおりにできる」という安心感を与えなければなりません。
巨人の肩の上に立つ
しかし、だからといってホワイトペーパーやライブプロジェクトの主張を検証するために、他の人の意見を参考にすることができないわけではありません。
ウォールストリートベッツのドラマで扱われたように、レディットのようなソーシャルサイトはプロのアナリストに匹敵する洞察力の深さを持っているため、貴重な情報や意見の情報源となります。他人が行ったリサーチが合理的で偏りがないと思われる場合は、それらを参考にすることで、優位に立つことができます。
その他の有用な情報源は以下の通りです。
・ビットコイントーク
・テレグラムグループ
・あらゆる公式ソーシャルメディア
・ツイッターOG
・ミディアム
使用状況と採用の指標
暗号通貨プロジェクトがある問題をどのように解決しようとするかについての説明の一部として、問題と解決策の両方を定量化するデータへ言及する必要があります。
これらにはマクロ経済データ、対象としてる既存企業に関する情報、一般的な採用モデルなどが含まれます。
プロジェクトが高速、低価値/コスト、無許可の取引に焦点を当てている場合、国際送金の市場規模、既存のサービスや特定のニッチに焦点を当てる試みが行われます。
これはファンダメンタルズ分析の難しさを浮き彫りにする難しい課題です。また、既存の報告書がない場合は、グーグル検索のトレンドデータやレディットの購読者などを参考にする必要があります。アイデアやソリューションに対する市場心理のバロメーターとして信用できるものであれば何でもよいのです。
グーグルトレンド
暗号通貨プロジェクトに対する投資家たちの関心を測る最も簡単な方法の1つは、グーグルトレンド機能で利用できるグーグル検索センチメントというものを使用することです。この機能によって、特定の検索ワードに対する過去の反応を調べ、関心がピークに達した時期を確認することができます。
グーグルトレンドは0~100で関心度を示し、数字が大きければ大きいほど関心が集まっているということになります。時間範囲を拡大・縮小したり、国別のデータに切り替えたりすることができます。
ホワイトペーパーの出版まで遡って「ビットコイン」という検索語のワールドワイドグーグルトレンドのデータを見ていて非常に興味深いのは、検索センチメントのピークがブルマーケットのクライマックスである2017年であるということです。その後、価格はその高値を超えて200%上昇しましたが、一般的な検索センチメントはその水準に達していません。
結論:最近の価格上昇は2017年のレクリエーション投資家によるものほどではなく、機関投資家の資金によるものが多いです。そのため、一般人がググったときにもっと知りたいと関心を持たれる余地があります。
トレンドデータを国別に切り替えてそれぞれの違いに注目してみてください。アルゼンチン、トルコ、ベネズエラ、ナイジェリアなど通貨安の国でフィルターをかけると(下図)、まったく異なる形の折れ線グラフが表示されます。これらを見ることで、需要がどこから来ているか、人々の関心が価格やナイジェリア人の直面している問題に特化した暗号通貨サービスにどのように影響するかについて考えることができます。
ソリューションの定量化
実際の機能に基づいて、暗号通貨の潜在的価値を定量化したビットコイン価格モデルの好例として、プラン・ビー・フォア・ビットコインが作成したストック・トゥー・フロウがあります。
ビットコインは世界初の暗号通貨であり、新技術であるため、その価値や潜在的な影響をモデル化することは非常に困難でした。
ストック・トゥー・フロウは、その内在的価値として希少性に着目し、金、銀、その他の希少な商品における希少性を測定するアプローチによるものです。その結果、分析方法の正確性が証明されただけでなく、ファンダメンタルズ分析において非常に貴重な価格モデルが生まれました。ビットコインの価格予測モデルについては、弊社のブログで詳しく紹介しています。
ソリューションを数値化したデータにより、プロジェクトの進捗を測定することができます。そこでは、プロジェクトによって異なりますが、考慮すべき重要な点がいくつかあります。
例えば、Twitterのフォロワー数、ブログの閲覧数、ホワイトペーパーのダウンロード数などは注視する必要はないでしょう。
一方、テストネットで実施されたパフォーマンス測定基準には注意が必要です。
オン・チェーン・メトリクス
ファンダメンタルズ分析はテクニカル分析と異なる分野ですが重なる部分もあります。オン・チェーン・メトリクスについて、価格変動の先行指標としての価値はすでに紹介しました。広く見れば、プロジェクトの長期的な利益の可能性について分析する際、非常に役に立つ指標といえます。
暗号通貨プロジェクトの場合、オン・チェーン・メトリクスによってブロックチェーンが実際に使用されているかどうかが分かります。また、移動平均だけでなく成長率の具合を見るために相対的な数字を探す必要があります。
トランセクション・カウント、トランセクション・バリュー、アクティブアドレス数などの指標は、基盤となるブロックチェーンにユーザーがいるかどうかを示してくれますが、利益に繋がることを保証するものではありません。
アドレス分布(ユーザー全体のコインやトークンの比例配分)は、ユーザーのタイプを知ることができるため、より有意義なものであるといえます。残高が少ないアドレスばかりか、健全な分布なのか、コインの流通速度はどの程度なのかについて見ることができます。
また、使用されているコンセンサス方式の指標も見ておく必要があります。プルーフ・オブ・ワークの場合はハッシュレート、プルーフ・オブ・ステークの場合はステーク額/コントリビューター数などと関連します。
どのようなコンセンサスメカニズムであれ、偽造やごまかしのできない指標を見つけるようにし、ネットワークが補助金や譲歩によってサポートされているかどうかを検討します。
IT技術に詳しい人なら、この種のデータはノードを走らせるか、APIから引っ張ってくることでアクセスすることができるでしょう。もしそれが面倒であれば、データを提供してくれるオンライン・リソースがあるのでそれらを活用しましょう。ただし、小規模なプロジェクトについては、他にもいろいろと調べる必要があるかもしれません。
料金の発生、アクティブなバリデーターの数、ロックされた値の量などの詳細なデータを提供するウェブサイトがあります。これらはすべてプロジェクトの潜在的な将来価値を見出すのに役立つ非常に有用で有意義なデータポイントです。
競争と差別化
何を、なぜ、どのように、という考えはかなり重要ですが、それだけでは新しい暗号通貨の投資で長期的な利益を得ることは難しいです。
現在、3,000を超えるコインやトークンが存在し、それぞれが独自のユースケースを公示しています。これらが成功するかどうかは、その暗号通貨が既知の問題に対する解決策を提供する唯一のプロジェクトであるかどうかにかかっているといえます。
その暗号通貨プロジェクトが最初に市場に出ていない場合、優れたソリューションを提供するか、既存のプロバイダーに比べてソリューションの開発が早いか、何らかの意味のある差別化要因を提供することでのみ成功することができます。これらには以下の内容が含まれます。
・より多くの開発者
・より良い事業体制
・より良いマーケティングとプロジェクトの明確化
・より多くの投資
財務指標
暗号通貨には収益に基づく指標はありませんが、有用性の高い指標はあります。
時価総額
流通しているコインの数(別名:流通供給量)×価格で算出します。この指標だけでは、なりすましやパンプ・アンド・ダンプのように相場を操作される可能性があるため、慎重に扱う必要があります。
しかし、マーケットキャップと取引量を組み合わせれば、より効果的な指標となります。
トークン配布と経済モデル
暗号通貨プロジェクトが資金調達のためにトークンを発行する際、トークンの配布方法に関するスキームを公表することになります。これには「プレミン」が含まれることが多く、基本的にトークン供給量の一定割合が、メカニズム外で作られることを意味し、本質的に無から価値を生み出すことになります。
これはICOや新しい暗号ベンチャーとの論争の的となり、プレミンはしばしば早期に現金化しようとする試みと関連付けられています。
トークンの配布は、プロジェクトがどのように資金を調達し、投資家、チーム、コミュニティ、ユーザーに報酬を与えるつもりなのかについての貴重な情報です。プロジェクトがしっかりしたものであればロックアップ条項が含まれており、トークンで報われた人は特定の期間が経過するまで現金化することができないことになります。
トークンの配布は、トークンやコインの供給を管理する経済モデルの 1 つの要素であり、希少性と価格に重大な影響を及ぼします。ビットコインがデジタルキャッシュの一形態であることを考えると、明確な発行メカニズムによって2100万枚に固定化された供給量の確実性によって、多くの人々が投資する結果となっていると考えられます。明確な経済モデルがなく、供給量に上限がないものや容易に変更できるプロジェクトは警戒すべきだといえます。
未来を見通す
新しい技術の将来性を評価することは難しいかもしれません。テスラが良い例で、PEレシオを含む財務情報を持つ上場企業ですが、2020年に株価が7倍上昇したのは現在の業績によるものではありません。
将来の電気自動車の普及といったマクロ要因に加え、バッテリー技術の発展、化石燃料ベースの車に対する意識の変化、自律走行車といった予測困難な影響に対する投資家の意識から来ていると推測されます。
また、同様に株式取引の容易さなどが大きな要因となっています。しかし、新しいトレーダーがイーロン・マスクCEOのカリスマ性をどのように評価したかということも重要です。そういう意味では、ファンダメンタルズ分析には主観的な要素も必要なのです。
Covid19の影響を見ると、暗号通貨は未知の領域、存在しない問題に対する解決に踏み込むことになります。
これはどういうことかというと、投資は時に今あるものよりも未来を見ることが必要だということです。インターネットの発達は、ブロックバスターのような実店舗を破壊し、今では当たり前のビジネスや消費者サービスを提供する全く新しい方法を生み出しました。
ブロックチェーン技術に関連してそのような変化が訪れるとしたら、どこで最も大きな影響を受けるのでしょうか、技術の採用は単純な経路をたどることになるのでしょうか。ここに確実なものはなく、一般的には価格をめぐる楽観主義と悲観主義をそれぞれ指すブルとベアマーケットというラベルがセンチメントを測定しますが、他にも新しい技術がどのように採用されるかを説明するためのより具体的なモデルが存在します。
イノベーションの普及(エベレット・ロジャーズ)
様々な特性や動機を持つ採用者のグループ間で、正規分布曲線に従って採用が行われることを示します。採用の臨界点は、イノベーターとアーリーアダプター(全採用者の16%を占める)からメインストリームに移行する「キャズムのジャンプ」と呼ばれています。アナリストの多くは、暗号とブロックチェーンがそのポイントにあると考えています。
ガートナー・ハイプ・サイクル
ガートナー社のブランドモデルで、新しいアイデアや技術が「技術の引き金(黎明期)」から始まり、「過剰期待の頂(流行期)」、「幻滅のくぼ地(幻滅期)」、「啓蒙の坂(回復期)」、そして最終的には「生産性の台地(安定期)」に至るまでの明確な段階を経て、その道筋を視覚的にしたものです。
エリオット波動原理
エリオット波動は、投資家の心理に着目し、楽観と悲観の間を自然なサイクルで動くことを示しています。このような心理の揺れは、5つの大きな段階での値動きとあわせてパターン化されています。
エントリーポイント&DCA
ファンダメンタルズ分析は広範囲に及ぶため、この記事は部分的な説明に過ぎません。しかし、ある時点で投資するかどうかの線引きをする必要はあります。テクニカル分析とファンダメンタルズ分析はそれぞれ異なるアプローチですが、互いに補完し合うことができます。すでに取引されている暗号通貨についてファンダメンタルズの研究を行った場合、テクニカル分析はエントリーポイントを作るタイミングを決定するのに役立ちます。
いますぐ投資することに抵抗がある場合は、このセクションの序章で説明したドルコスト平均法を利用すると良いでしょう。
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