2021年のブロックチェーン技術

　　暗号通貨の将来について議論するにおいて、まず、この業界が現時点でどのような状況にあるのかを理解することが不可欠です。ブロックチェーンの領域は「歴史が浅い」、「動きが速い」、「他のテクノロジーと相互作用する」という3つの側面があります。

　　ちなみに、暗号化技術は以前から存在していました。昨今のブロックチェーンをめぐるイノベーションの多くは、1990年代のサイファーパンクの動きに根ざしています。しかし、ブロックチェーンが発明され、初めて適用されたのは2008/09年のことで、わずか10数年前のことなのです。

　　インターネットが最初に使用されたのは1970年代で、学術界や軍事ネットワークが通信のために使用し、その後、ブロードバンドやモバイルの普及が拡大し、本格的に普及するのは2000年代初頭のことでした。

　　それに比べれば、ブロックチェーン技術や暗号産業はまだまだ歴史が浅いのです。

　　空間Web

　　デジタル技術やコミュニケーションの進化、そしてブロックチェーン技術によって、この業界は非常に速いスピードで変化しています。むしろその速さについて行くのは大変なくらいです。

　　次に、ブロックチェーンが誕生してからまだ10年しか経っていませんが、その間に多くのことが起こりました。イーサリアムとスマートコントラクト機能により、全く新しい産業と多くの企業が台頭することとなりました。その中には、イノベーターであった企業もあれば、そうでなかった企業もあります。

　　これらの産業には、Defi、DAO、NFT、Digital identityなどが含まれます。業界の将来を評価するためには、これらの主要な革新的分野に分解し、それらがどこに向かう可能性があるのか認識することです。

　　最後に、ブロックチェーン業界は真空地帯で活動しているわけではないということです。人工知能、拡張現実、仮想現実、モノのインターネット（スマートカー、ロボット工学、生体認証など）、5Gネットワーク、3Dプリント、GPT-3などの開発が、ブロックチェーン分野とともに一ヶ所に集中してきています。これらの開発は、ウェブ3.0と呼ばれており、または「空間ウェブ」とも呼ばれています。

　　ブロックチェーン産業がどこに向かっているのかを認識するためには、ブロックチェーンだけを切り離して分析することはできません。他のテクノロジーとどのように相互作用し、これらの相互作用がどのようなイノベーションをもたらすかも評価しなければなりません。

　　このような現状を踏まえ、以下の記事では、現在の暗号技術における革新の主要分野を評価し、その将来性に焦点を当てます。最後には、「空間ウェブ」において、ブロックチェーンが重要な役割を果たすことになる大きな展望をお見せしようと思います。

　　分散型金融

　　Defi (Decentralised finance) は、スマートコントラクトを介して資産管理を革新するために使用する様々な金融アプリケーションの包括的な用語です。

　　ここでの重要な革新とは、ブロックチェーン上に構築された金融商品は、銀行、証券会社、取引所などの仲介者がいないことです。これには多くの利点があります。

　　・銀行口座を持たない人々（推定10億人以上）に新たな金融アクセスを提供する

　　・新しい形の利回りへのアクセス

　　・分散型ステーブルコインや合成トークンなどの革新を可能にする

　　・アーリーステージ投資への参入障壁の排除

　　ステーブルコインは、ビットコインやイーサリウムなどの暗号通貨特有の変動制を解決してくれます。これは、DeFiのイノベーションで(別記事で紹介）、最も有名な例は、スマートコントラクトを利用して出来るだけ1ドルに近い価値を維持する暗号通貨、DAIでしょう。これにより暗号通貨業界には通貨選択の安定性とさらなるイノベーションをもたらすことになりました。

　　合成トークンは、デリバティブ（原資産となる変動資産から価値を得る金融商品）の一種です。これらのトークンは、あらゆる価格指標を追跡することができ、以前は不可能だったさまざまなリスクレベルへ触れることを可能にします。これらの合成トークンのアイデアには、次のようなものがあります。

　　・特定のアプリのダウンロード数を追跡するトークン

　　・取引不可能な価格指標を追跡するトークン

　　・DeFi製品の将来の使用状況を追跡するトークン

　　DeFiのデメリットは、ブロックチェーン取引は不可逆的であるため、誤った取引を容易に取り消すことができないことです。また、分散化とプライベートな性質から、規制が厄介なのです。

　　規制の重要な分野の1つはCBDCです。中央銀行デジタル通貨は、現在、世界の中央銀行の80％によって重点的に研究されており、中国人民銀行は、デジタル人民元を試験的に導入しています。これは政府がCBDCでDeFiのイノベーションに追いつこうとするものです。 トレーサビリティや通貨供給コントロールなど、政府が有用と考える暗号の要素を厳選する一方で、パーミッションレスやボーダーレスといった暗号の役割に挑戦する要素を捨てたハイブリッドなのです。

　　DeFiは、現在、ブロックチェーン業界で最も重要な役割を担っていることは間違いありません。様々な分散型金融プロトコルに推定110億ドルもの資金が預けられているのです。分散型金融の土壌が成熟し、より信頼できるようになるにつれて、清算と採択が増え、より多くのイノベーションと、世界的に資本と高金利へのアクセスが増加する可能性があります。

　　分散型自律組織

　　Decentralised Autonomous Organisations（分散型自立組織）またはDAOsは、スマートコントラクトによって動く組織で、中央集権的な体制を取っていません。以前の記事で取り上げた例ですが、DAOはメンバーによって運営される新しいタイプのベンチャーファンドを目指していましたが、ハッキングされて廃止されたというのは有名な話です。

　　DAOは、会社組織や民主主義の理念に挑戦する姿勢で、取引をより分かりやすく、効率化しています。

　　しかし、イーサリアムの重要な経験は、DAOは単なる成文化されたルールであり、コードのロジックが悪用される可能性があることを示しています。DAOは単にガバナンスの難しさを軽減するための試みであるため、本当に成功するには長い道のりが必要です。

　　DAOが機能している良い例はMakerDAOで、米ドルにソフトペッグされた安定コインであるDAIを生成するコミュニティガバナンスを可能にするモデルを使用しています。ユーザーは、CDPと呼ばれる金庫に保管された暗号通貨を担保としてDAIを生成します。

　　非常に複雑なアイデアであり、課題がないわけではありませんが、DAIにロックされた価値の量は常に増加しており、安定性手数料の支払いに使用されるMKRトークンの価値も増加し、DAIがペグを維持することを確実にしているのです。MakerDAOは完全な自律性に向けたロードマップを進んでおり、DAOの真の可能性を実現し、他のベンチマークを設定しています。

　　NFT、サプライチェーン、アイデンティティ

　　Non-Fungible-Token (NFT)は、ブロックチェーン技術に基づく特定のタイプの暗号トークンです。ビットコインや他の暗号通貨が他のトークンと自由に交換できる代替可能なものであるのとは対照的に、NFTは相互に交換することはできません。

　　NFTはデジタル希少性を生み出し、美術品、収集品、その他のデジタルアイテムのデジタル取引を促進するアプリケーションにおいて取引されています。有名な例として、ブロックチェーンを利用したゲーム「クリプトキティーズ」があります。NFTは、（開発者ではなく）ユーザーが管理するゲーム内資産で、第三者のマーケットプレイスにて取引することができます。

　　NFTのコレクターズプラットフォームは爆発的に増加しており、個々の作品が目を見張るような金額で取引されています。バンクシーは最近、「Morons」と呼ばれるアート作品を燃やし、そのライブストリームからNFTを作成し、この作品は38万ドルもの金額で落札されました。

　　音楽業界やスポーツ業界では、NBAがクラシックなビデオクリップのNFTを販売したり、バンドがアルバムやVIP体験をトークン化するなど、NFTによって既存の取引モデルを覆しつつあります。

　　NikeはブロックチェーンベースのNFTスニーカー「CryptoKicks」の特許を持ち、DecentralandはMinecraftの暗号版で、NFTを仮想不動産の購入に利用しています。ほかにも、Decentralandのトークン「MANA」の時価総額は約2億2500万ドルで、2017年の立ち上げから5倍以上になっています。

　　NFTが利用されている分野の1つに、サプライチェーンマネジメントがあります。理論的には、NFTはデジタルだけでなく物理的な財の表現にも利用できます。グローバルなサプライチェーンにおける商品の取引と管理は、まだ暗号通貨によって手つかずで、効率化される余地があります。ブロックチェーン技術によって管理されるサプライチェーンの中に、NFTが含まれることになりそうなのです。

　　独自性とその起源は、ブロックチェーンの最も分かりやすい例の1つであり、この技術が将来にとって重要な分野であることは間違いないでしょう。コロナウイルスの大流行は、相互接続が進む世界を管理するために使用されている現在のフィアットインフラがいかに非合理かを浮き彫りにしました。

　　コロナウイルスの追跡の失敗から、欠陥のあるPPE機器の調達に至るまで、これらのシステムの管理は改善が必要です。ブロックチェーンは、データを確実かつ安全に保存する方法を提供することで、この改善を達成することの手助けになるかもしれません。

　　また、ブロックチェーンを利用したデジタルIDは、予防接種の記録を追跡する方法を提供することができるかもしれません。そして、追跡や国境管理の取り組みに役立つデジタル・パスポートのようなものも実現できるかもしれません。

　　すでに述べたように、デジタルIDは人だけではなく、物理的な商品にも拡張することができます。この拡張により、商品の取引とその出所の追跡の能力が向上する可能性があります。

　　これらのことを理解するためには、ブロックチェーンを適切な文脈の中でで検討する必要があり、その結果、Web 3.0とブロックチェーンの相互運用性が見えてきます。

　　Web 3.0とブロックチェーンがもたらす相互接続の未来

　　Web 3.0、別名「空間ウェブ」は、さまざまな技術が相互接続されるようになる一連の開発のことを指します。ブロックチェーン技術もその一つで、人工知能、拡張現実、仮想現実、モノのインターネット、5Gネットワーク、3Dプリンティングなど、さまざまな技術が含まれます。

　　想像してみてください。AIシステムが交通機関を運行し、拡張現実メガネで直感的に情報を表示し、私たちのニーズを直感して3Dプリントする世界が5Gネットワークでつながり、ブロックチェーンが共有されていることを。素晴らしいことだと思いませんか？

　　ブロックチェーンの観点で重要なのは、相互運用性です。これは、コンピュータシステムやソフトウェアが情報を交換し、利用する能力です。

　　上記の例で挙げた技術が相互接続されるようになるためには、本当のイメージを共有することが必要です。この現実認識の共有がなければ、これらのテクノロジーは統合されず、その潜在能力を十分に発揮することはできないでしょう。

　　分散型台帳技術（ブロックチェーン）は、この相互接続されたインフラストラクチャのためのパワーを提供します。ブロックチェーンは、データを安全かつ確実に分散型に保存する方法を提供します。ブロックチェーンは、ハッキング不可能なで、グローバルで共有される記録、イベント、取引の台帳への道を切り開いてくれます。

　　悪意のある第三者や矛盾する記録を心配することなく、テクノロジー同士が信頼性の高いコミュニケーションを始めることができるのです。これには大きな可能性がありますが、まだまだスタート地点に立ったばかりなのです。

　　イーサリアムのようなブロックチェーンプラットフォームは、グローバルに共有される記録システムというニーズを満たすために、現在も拡張中です。ウェブの次の時代に向けて、ブロックチェーン技術が重要な役割を果たすことは間違いないでしょう。

　　この記事、そして暗号通貨の基礎編を読み終えた後、この技術の可能性を理解し、その仕組みや革新的な分野、今後の未来を想像し始めることができればと願っています。