このレッスンでは、ビットコインがどのようにして、誰の管理も必要としないデジタル通貨になったのかを説明します。
このレッスンでは、ビットコインがどのようにして、誰の管理も必要デジタル通貨になったのかを説明します。
まず、ビットコイン(BTC)は、サトシ・ナカモトと名乗る人物(またはグループ)によって作られました。
今日に至るまで、この人物が一体誰なのか誰も知りません。そして、ビットコインのシステムが十分に強固になったタイミングで、この人物は跡形もなく消えてしまったのです。
これが何より、サトシ・ナカモトがビットコインに遺した、「最大の遺産」と言えるでしょう。また、そのようにすることで通貨が持つデメリットを取り除くことが出来たのです。
どういうことかと言いますと、例えば、誰かの手によって金(gold)が「産み出された」とし、さらに、金(gold)の供給をコントロールすることが出来たら、その人物は間違いなく、金(gold)に対して大きな影響力を持ち、その権力により世界を欲しいままにするでしょう。
また何者かに、自分たちの利益になるようシステムの修正を要求されたり、賄賂を渡されたり、法的措置を取られたり、もしくは暴力などで、強い圧力をかけられたりする可能性もあります。それは政府か、はたまたマフィアか分かりませんが、いずれにせよ、貨幣システムが一点に集中しているということは、こういった弊害が起きることになります。
しかし、ビットコインは例外で、上記のような弊害がなく、制限なくルールを決められるわけでもありません。ビットコインは個人や国にとどまらない世界の通貨であるのです。
暗号技術と経済性
ビットコインは、コンピュータによる計算と暗号技術に、競争と金銭的報酬を巧妙に組み合わせたシステムです。ルールさえ守れば、全ての参加者が大きな利益を得られるよう設計されています。その代わり、ネットワーク自身がシステムを管理しますので、単一の機関がシステムを制御することはありません。
ビットコインは、参加者が、後述する「マイニング」と呼ばれる作業を行うことによって、そのネットワークが支えられています。マイニングにより貢献してくれた者には、高額の報酬が支払われます。また、不正行為をするよりも、真面目にマイニングをする方が得られる利益が大きいので、わざわざ不正行為をする人は少ないのです。マイニングによって、新しいビットコインが発行されますが、その供給量はシステムによって管理されています。つまり、どれくらいビットコインが発行されるのかは予測可能なものなので、通貨としての価値は保たれています。
また、ネットワークが大きくなり、参加者が増えるにつれて供給量は急速に増えていきます。多様で強固なネットワークを持っているからこそ、ビットコインが大きな力を持つようになったのです。
時には、参加者同士で利害が対立することもありますが、全員が「ビットコインの成功」という共通の目標を持っています。
ビットコインに投資している人が多ければ多いほど、万が一それが破綻した時に、被害を受ける人も多くなります。そのため、すべての参加者がお互いの利益を生み出し続ける共存関係が生まれるのです。
それでは、ビットコインがどのようにして成り立ち、またその台帳は誰が管理しているのでしょうか。それを知るために、まず、システムがどのように設計されているかを考えてみましょう。。
ビットコインの設計
一口にビットコインと言っても、その要素は様々ですが、この項目では設計面に焦点を当てます。
まず、ビットコインはP2Pのネットワークで、すべての参加者が一連のルールと指示(プロトコル)のもと、取引の検証や新規コインの発行を行います。
このルールを実行するソフトウェアをコンピュータに入れれば、そのコンピュータはビットコインのネットワークに参加できます。このコンピュータのことを「ビットコインノード」と言います。
どのような銀行でも営業するには銀行法に従わなければいけません。しかしビットコインのルールは銀行法とは違い、取り締まるのは裁判所ではなく、コンピュータのコードなのです。つまり、より信頼性が高いということです。
次に、取引台帳についてです。ビットコインの取引台帳はブロックチェーンと呼ばれ、すべての取引を記録しています。台帳を記録するブロック(箱)が定期的に作成され、前のブロックと連結してチェーンを形成します。
最後に、ブロック上の取引が正しいのかどうか、チェーン全体が正確に機能しているかを相互に確認し合う仕組みがあり、これが前述したマイニングです
つまり、参加者はルールとコードだけを信頼すればいいのです。
では、実際にどのように機能するのでしょうか。
ブロックチェーン:信頼と検証
ビットコインの最も画期的な点は、ブロックチェーンと呼ばれるその台帳と、取引が正しいものかどうかの検証方法にあります。
例えば、ある銀行が別の銀行に1ユーロ送金したとしましょう。その銀行の残高から確かに1ユーロ減っているのかどうか、どうやって確認すればいいでしょうか。残念ながら、銀行側のみしか台帳を見ることができないため、我々には確認できません。なので、台帳がきちんと整合性を保っているかどうかを検証をする術はなく、銀行を信用するしかないのです。
銀行がミスを犯しても、あるいは貸付金の限度枠を適当に増やしても、我々はそれを確認することができません。
2008年の金融危機(リーマンショック)が教えてくれたように、これは時には大惨事に至ります。
銀行は法律を守らなければいけませんが、自分たちに有利になるように規制を回避することや、変えてしまうことは出来るのです。2008年、銀行や金融業者は、これを悪用して、金融商品に、途方もない量の債権を組み込んだのです。しかし、この金融商品はとても複雑であるため、誰も理解することができませんでした。
このような腐った商品が債務不履行に陥り、世界経済が破綻したのです。その結果どうなったでしょうか。
このような事態を引き起こした銀行を救済するために、何兆ドルもの資金が投入されたのです。
しかし、ビットコインは、この論理をひっくり返しました。ビットコインは、1つの台帳を中央機関が保管するのではなく、すべての取引の台帳を、参加者全員が共有するようにしたのです。
誰もが、その中のすべての取引が正当であることを検証することができ、ルール違反の取引は、ソフトウェアによって自動的に排除されます。
ビットコインの取引は約10分ごとにブロックにまとめられ、過去のブロックの、長いチェーンに追加されます(ブロックチェーンという用語の由来)この台帳にブロックを生成していく作業を「マイニング」と呼びます。
しかし、台帳を共有することには問題点があり、それは「現在の台帳」が最新のものであるということに、どうやって参加者全員の合意を取るのかということです。誰も責任者がいない状態で、どうやって世界中の何千台ものコンピュータから合意を得ることができるのでしょうか?
マイニングのインセンティブとしての仕組み
この古くからあるコンピュータの問題に対して、ビットコインが導入したものが「マイニング」なのです。またこれは、数学、経済競争、報酬を組み込んだものであります。
マイニングの参加者は、台帳にブロックを生成するための複雑な計算作業の競争を行います。時間は平均10分かかるよう調整されており、その時のコンピュータの処理能力を考慮して、2週間ごとにマイニングの難易度が調整されます。
競争の勝者は、そのブロックにトランザクション(取引)を追記して、成果に見合った報酬を受け取ることができます。(以下で説明します)そして大きな特徴として、誰もが簡単にその計算が正しいのかどうかを確認できることにあります。
もし誰かが不正をしたら、他の参加者全員がそのブロックを拒否すればいいだけです。不正をした者には報酬どころか、そのブロックをマイニングするために費やした労力もすべて無駄になるという、二重の損失が待っています。この損失は、予想される利益を遥かに上回っています。
一応、マイニングは誰でも参加できますが、計算は非常に難しく競争も激しいため、現在では数百台の専用コンピュータがないとまず勝ち目はありません。これは相当な投資額ですが、このようなコストにもかかわらず、マイニングは非常に収益性が高いです。そのため競争も激しく、何者かによる独占状態ということはありません。
さらにビットコインの価値が上がれば上がるほど、マイニングの参加者が増え不正が難しくなり、それによってビットコインはより強固なものになるのです。
マネーサプライとインフレ
マイニングは、新しいビットコインをシステムに発行する方法です。
マイニングの競争に勝った人は、新しいブロックをブロックチェーンに追加することができ、さらに取引手数料と、ブロック報酬として新しいビットコインを受け取れます。取引手数料の金額は、マイニングしたブロックに記帳されたすべての取引に対して支払われた手数料の合計であり、需要に応じて変動します。これは、すでに流通しているビットコインで支払われますが、その一方でブロック報酬には、新しいビットコインも含まれます。
実は、現在流通しているビットコインはすべて、マイニングによってネットワークに導入されたものなのです。
2009年にスタートしたビットコインのマイニング率は、1ブロックあたり50枚で始まりましたが、この数はプロトコルにより、4年ごとに半減される仕組みで、現在の報酬は、1ブロックあたり6.25ビットコイン。またこれは2024年まで続きます。
このプロセスは、上限枚数である2100万BTCがすべて発行されるまで続き、その時にマイニングをした参加者は取引手数料しか受け取ることができません。
新たなビットコインを任意に発行することや、発行レートをいじることは、参加者全員がルールの変更に同意でもしない限りはあり得ませんし、その同意を取ること自体も難しいでしょう。
「固定供給」と「予測可能な発行率」
この2つの組み合わせによって、インフレに対する懸念は完全に無くなると言えます。
究極のサウンドマネー(健全な通貨)?
ここまで見てきたように、ビットコインとは日本円や米ドルのような不換紙幣と異なり、責任者がいなくても通貨としての価値を保ち、信頼ができます。
それでは、その他の特性と、それらをどのように満たしているかを説明します。
・耐久性:ブロックチェーンというシステム構造は、とても強い耐久性を持っています。
すべてのノードが取引台帳のコピーを持っているので、ビットコインのネットワークを破壊しようと思ったら、世界中に分散している5万台、もしくはそれ以上のノードを、すべて同時に破壊する必要があります。しかも、どれだけあるのかわからないバックアップも含めてです。そのようなことを考えると、現実的ではないでしょう。
・分割可能性:ビットコインの最小単位はサトシと呼ばれ、1BTCの10億分の1です。
これは、現在の少額取引の最小単位よりも、文字通り桁違いに精密です。しかし手数料の関係で、現在のところ、そのレベルでの取引は実用的ではありません(後述)。
・貨幣性:ビットコインはすべて公平に生み出され、価値も等しいです。
ある1グラムの金(gold)が、他の金(gold)と等価であるのと同じことです。
・携帯性:ビットコインは完全にデジタルで、コンピュータ、携帯電話、紙媒体などに保存することができます。
インターネット環境の有無に関わらず、世界中のどこにでも瞬時に送金することができます。
ビットコインの限界
もちろん、完璧なシステムというのはありません。ビットコインのような分散型システムは、中央集権型システムにはない限界があります。それがいわゆる「トリレンマ」言われるものです。
ネットワークを形成する際に、「セキュリティ」「スケーラビリティ」「分散化」の3要素はトレードオフの関係にあり、全てを同時に実現することは出来ません。
・スケーラビリティとは、大量の取引を実行するためのシステムの能力。
・セキュリティとは、不正行為やハッキング、その他あらゆる攻撃から台帳を守る能力。
・分散化とは、システムの冗長性のことで、ある特定の人物がネットワークを支配することを阻止すること。
日本円や米ドルのような不換通貨は非常に拡張性があり、それなりに安全ですが、その反面、ごく少数の人によってコントロールされていて、極めて中央集権的と言えます。
一方、ビットコインは分散化の性質を持つため、その点では非常に安全です。ですがその分、スケーラビリティが欠如しています。
現在、ビットコインの最高速度は1秒間に5件程度(5万件以上と言われるVISAの取引件数の1万分の1)であり、大規模に利用するには現実的ではありません。ビットコインが資産の保管場所として人気があり、交換媒体としてはあまり人気がないのは、こういった理由によるところです。
次のレッスンでは、ビットコインやその他の暗号通貨が、このトリレンマをどう克服し、健全な通貨になったかを見ていきたいと思います。
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