ベンチャーキャピタルのICO策略でビットコインのエコシステムが資金不足に＝アダム・バック氏

　　Gareth Jenkinson

　　2023年07月05日 07:26

　　ベンチャーキャピタルのICO策略でビットコインのエコシステムが資金不足に＝アダム・バック氏

　　過去5年間にベンチャーキャピタル（VC）からの投資がビットコイン以外の仮想通貨に大きく流れていることが、市場調査から明らかになった。この傾向はイニシャル・コイン・オファリング（ICO）の台頭がビットコインエコシステムの発展を阻害している可能性がある。

　　スイスのルガノで開催されたルガノ・プランBサマースクールで、ブロックストリームCEOのアダム・バック氏はコインテレグラフのジョセフ・ホール氏と対談した。その中でビットコインへのVC投資の少なさと、ビットコインが全体の仮想通貨市場時価総額で占める優位性との間にある不均衡を指摘した。

　　ビットコインのプルーフ・オブ・ワーク・アルゴリズムの元となったハッシュキャッシュの発明者であるバック氏は、イーサリアムとスマートコントラクト機能のローンチ後の数年間におけるICOブームへのベンチャーキャピタルの流入について詳述したトラメル・ベンチャーズ・パートナーズが発表した市場調査を引用した。

　　ICOに対するベンチャーキャピタルの支出は、「初期の流動性」に惹かれて急増した後、近年は縮小しているとバック氏は指摘する。

　　「割安なトークンを購入し、投資した企業がマーケティングを行うのを待ち、製品化される前に割安なトークンを個人投資家に売りつけていた」

　　バック氏はICOが投資家に大きな利益をもたらしたものの、製品が市場に出ることなく、価値を認められることなく終わった場合が多かったとも指摘。「インセンティブがずれていた」と述べた。

　　トラメル・ベンチャーズのレポートによると、過去数年間のVC投資の97%が「仮想通貨」に、つまりビットコイン以外に流れていた。バック氏はICO、アルトコイン、割引トークン、その他のプロジェクトが投資家を引き付けたことを指摘。

　　「考えてみれば驚きだ。実際のユースケースや市場の強さを考えると、取引量は逆で、ビットコインが90%以上を占めている」

　　バック氏は、この投資カテゴリーの投資家からビットコイン領域の資金調達が不足しているものの、エコシステム内のビルダーは、VC支出の大部分を集めている「仮想通貨」ICOと比較すると、「より多くのイノベーションとより多くの製品価値を生み出している」と述べた。

　　FTXの失敗やテラのような分散型金融プロジェクトの崩壊は、VCの資金調達行動の変化にも一役買っているかもしれない。バック氏は、ビットコインのスタートアップが新たな関心を示している一方で、アルトコイン製品は投資が増加していないと述べた。

　　「ビットコイン関連のスタートアップ投資は、特にアーリーステージでは、昨年から倍増している。これはポジティブな動きだ」とバック氏はコメント。

　　一方、ツイッターの共同創業者でありビットコイン支持者のジャック・ドーシー氏は、ビットコイン開発者サポートの非営利団体ブリンクに500万ドルを寄付した。

　　バック氏のブロックストリームとライトニングラボは、ビットコインプロトコルの開発における重要な資源供給者として認識されており、それぞれがビットコインの保守に専念する8人の開発者を雇用している。