FTX事件後のオフショア暗号資産交換所(規制が緩い国で設立された暗号資産交換所)に対する今後の暗号資産規制へ思いを馳せると、過去におけるプライベートバンク、特にスイスの銀行の当時の状況、規制強化を思い出す。それぐらい類似点が多い。
Cointelegraph Japan 2022年11月21日 15:23 FTX事件でプライベートバンク規制での既視感、日本の暗号資産交換所にメリット大
オピニオン
著者 中村 孝也(なかむら たかや)Fisco 取締役(情報配信事業本部長・アナリスト)
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役。2000年代前半の新規上場(IPO)ブームの際には、IPO担当として1,000社を超える企業の調査・分析を手がけた。Zaif(カイカエクスチェンジ)の親会社であるカイカエクスチェンジホールディングスの取締役なども歴任し、フィスココイン(FSCC)のバリューアップ責任者を務める。
FTX事件後のオフショア暗号資産交換所(規制が緩い国で設立された暗号資産交換所)に対する今後の暗号資産規制へ思いを馳せると、過去におけるプライベートバンク、特にスイスの銀行の当時の状況、規制強化を思い出す。それぐらい類似点が多い。
スイスでは銀行の秘密法制が強まっていたということ、山がちな国土で金庫の建設や防御がしやすいという地理的な要因、中立国という政治性に加え、税制などから、スイスの銀行はプライベートバンク(PB)、タックスヘイブンとしての地位を高めていった。
スイスのPBから送金される際は、「我々の顧客の1人=One of our clients」という名義、つまり匿名で送金されていた。また、法人の役員や株主を第三者名義で登記できるノミニー(Nominee)という制度の活用は、匿名性をさらに高めるものであった。
このような状況は、現状の暗号資産交換業界そのものである。大手の暗号資産交換所でも最近までKYC(本人確認)なしで多額の送金ができていた状況であり、KYCの極めて緩いオフショア暗号資産交換所、所有者との紐付けがないウォレット、匿名性の高い暗号資産の存在などは、過去のPBそのものである。
銀行秘密を規定した銀行法第47条には例外により、スイスの銀行は顧客の情報を国家権力にも明かさないとされてきたが、米国の同時多発テロ後のテロ資金炙り出しを意図するアメリカの圧力に屈した。UBSはアメリカでの脱税ほう助で様々な制裁を科されて、2008年にアメリカ上院の公聴会で謝罪し、今後アメリカ国民に対して、オフショア銀行業務を行わないことを誓った。
近年では税務当局の間で共通報告基準(CRS)によって「非居住者」の金融口座の情報を交換する制度が、2018年からスタートしており、スイスのPBにおける優位性は過去のものになりつつある。
このような動きに照らし合わせると、暗号資産交換業においても各国の規制が厳しくなることが容易に想定できる。加えて、世界の暗号資産業界の中ではエンロン的なコンプライアンス無視の風潮もある。規制の動きに先行し、かつ暗号資産交換業者およびIEOに対して監視の眼が比較的行き届いている日本の暗号資産交換業者は、少なからずそのメリットを受けることになろう。
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